【BLファンタジー】双剣の英雄 第7話
第7話 これからのこと
「そういえば、この洞くつは森のどの辺にあることになるんだ? 町に行かないと話にならないんだが……」
「あ、たしか、僕はまっすぐ歩いて来たつもりだから、洞くつから見て正面に歩けば、森から出られると思う」
カナエに問われて、そう言った僕は不意に、目覚めてしばらくしてから見た凄惨な光景を思い出した。
何度も、執拗にまで倒れ伏した人を突き刺される凶器と、狂った感情がにじみ出していた顔をした男の顔を思い浮かべる。
「どうかしたのか?」
「あ、……うん」
1日経っているけれど、もしかしたらあの男と遭遇するかも知れないと思うと不安だった。
それに……森の中で倒れていたカナエは、あの惨劇と関係あるのだろうか?
カナエは急に顔色が変わった僕を見つめていた。
僕はすこし躊躇いがちに事情を話し始めた。
「カナエに会う少し前に草原の方で、誰かを襲っている男を数人見かけたんだ。その誰かはもう多分亡くなっていたと思う。でも、その男達はまるで……遊んでるかのように槍で何度も亡くなった人を突き刺していたんだ」
「……」
カナエはしばらく無言で目を少し伏せた。
そして小さな声で、「そうか」とだけ呟いた。
カナエが何を考えているかわからないけど、なにかを思っていたのはわかった。
僕はあの男達とカナエに何か関係があるのか気になったけれど、結局、カナエに問うことはできなかった。
その後、僕とカナエは連れだって森の入り口に向かって歩き、途中目印をつけながら歩いて行った。
そして太陽がほんの少しだけ傾くほど歩くと、森が開けてくるのがわかりそしてついに草原へとたどり着いた。
心配した男達のことは、見る影もない。僕はこっそり安堵するようにため息を吐いた。
周囲を見渡しカナエはぽつりと呟く。
「なるほど、このあたりか」
カナエにはこのあたりの地域がどうなっているのかわかるらしい。検討がついたように呟いた。
「なら、ここから右の方角に行くと街道に出るな。宿駅も近くにある。町はデータクリスタルがなければ入れないが、宿駅なら……」
カナエはしばらく考え込んでいるようだった。僕はカナエに質問する。
「カナエ、宿駅ってなに?」
「街道沿いにある、主に旅人が利用する、宿屋と酒場を兼ねた施設だ。貸し馬屋もある。この近くにある町は中規模だが、交通量は多いからな。この近くの街道には宿駅が比較的多く点在しているんだ」
カナエはそう答えると、僕を見た。
「シュラ、ひとつ相談なんだが」
「なに?」
「一度宿駅を利用して町に行きたい。判断はおまえに任せる」
「どういうこと?」
「ようするに、俺が町に行っている間、シュラには宿駅で待機してもらいたい。この森は特殊でモンスターが少ないが、遭遇しないとは言い切れない。だからあの洞くつにお前一人を置いていくのは危険だとおれは思う。だから、安全な宿駅で待っていてもらいたいんだ」
「モンスター?」
「……そこからか」
カナエは表情を変えなかったが、大いに呆れたようなため息をはいた。
僕はその様子にムッとする。……仕方が無いじゃないか。生まれたばかりなんだから。
カナエは僕を一瞥する森の方を見て、説明し始める。
「モンスターは、この世界における、人を襲う、もしくは害を与える動植物の総称だ。中には肉食で人を食べる種族や、繁殖のための苗床にする種族もいる、非常に危険な存在なんだ」
「ふむ……」
「ステータスを見てると、シュラはそこらへんの魔物じゃ相手にならないほど強い。……が、おまえは戦い方を知らないうえに武器も持ってない。一人でいるには危険だ。だから、安全のために宿駅を利用したいんだ」
なるほど。と僕は納得した。
「カナエがそのほうがいいと思うなら、僕はなにも言うことが無いよ。だって、僕、生まれたばかりで右も左もわかんないんだ。だからカナエの方針に従うよ」
僕がそういうとカナエは「わかった」と頷く。
そうなると、宿駅ってどんなところか気になってきた。僕の好奇心が膨らんでいくのがわかる。
「ね」
「なんだ?」
「宿駅ってどんなところ?」
「そうだな……これから行くところはごく一般的な宿駅だ。別段変わっている所なんてないところだが、突然どうしたんだ?」
カナエは首をかしげて聞いてきた。
僕は素直に今の気持ちを伝える。
「ん? 楽しみだなって思って」
――そう、『いつだって』未知のものは楽しい。
僕はそう思い、へらりと笑ってそう言うと、カナエは無表情のまま、「……――変なヤツ」と答えた。
「そういえば、この洞くつは森のどの辺にあることになるんだ? 町に行かないと話にならないんだが……」
「あ、たしか、僕はまっすぐ歩いて来たつもりだから、洞くつから見て正面に歩けば、森から出られると思う」
カナエに問われて、そう言った僕は不意に、目覚めてしばらくしてから見た凄惨な光景を思い出した。
何度も、執拗にまで倒れ伏した人を突き刺される凶器と、狂った感情がにじみ出していた顔をした男の顔を思い浮かべる。
「どうかしたのか?」
「あ、……うん」
1日経っているけれど、もしかしたらあの男と遭遇するかも知れないと思うと不安だった。
それに……森の中で倒れていたカナエは、あの惨劇と関係あるのだろうか?
カナエは急に顔色が変わった僕を見つめていた。
僕はすこし躊躇いがちに事情を話し始めた。
「カナエに会う少し前に草原の方で、誰かを襲っている男を数人見かけたんだ。その誰かはもう多分亡くなっていたと思う。でも、その男達はまるで……遊んでるかのように槍で何度も亡くなった人を突き刺していたんだ」
「……」
カナエはしばらく無言で目を少し伏せた。
そして小さな声で、「そうか」とだけ呟いた。
カナエが何を考えているかわからないけど、なにかを思っていたのはわかった。
僕はあの男達とカナエに何か関係があるのか気になったけれど、結局、カナエに問うことはできなかった。
その後、僕とカナエは連れだって森の入り口に向かって歩き、途中目印をつけながら歩いて行った。
そして太陽がほんの少しだけ傾くほど歩くと、森が開けてくるのがわかりそしてついに草原へとたどり着いた。
心配した男達のことは、見る影もない。僕はこっそり安堵するようにため息を吐いた。
周囲を見渡しカナエはぽつりと呟く。
「なるほど、このあたりか」
カナエにはこのあたりの地域がどうなっているのかわかるらしい。検討がついたように呟いた。
「なら、ここから右の方角に行くと街道に出るな。宿駅も近くにある。町はデータクリスタルがなければ入れないが、宿駅なら……」
カナエはしばらく考え込んでいるようだった。僕はカナエに質問する。
「カナエ、宿駅ってなに?」
「街道沿いにある、主に旅人が利用する、宿屋と酒場を兼ねた施設だ。貸し馬屋もある。この近くにある町は中規模だが、交通量は多いからな。この近くの街道には宿駅が比較的多く点在しているんだ」
カナエはそう答えると、僕を見た。
「シュラ、ひとつ相談なんだが」
「なに?」
「一度宿駅を利用して町に行きたい。判断はおまえに任せる」
「どういうこと?」
「ようするに、俺が町に行っている間、シュラには宿駅で待機してもらいたい。この森は特殊でモンスターが少ないが、遭遇しないとは言い切れない。だからあの洞くつにお前一人を置いていくのは危険だとおれは思う。だから、安全な宿駅で待っていてもらいたいんだ」
「モンスター?」
「……そこからか」
カナエは表情を変えなかったが、大いに呆れたようなため息をはいた。
僕はその様子にムッとする。……仕方が無いじゃないか。生まれたばかりなんだから。
カナエは僕を一瞥する森の方を見て、説明し始める。
「モンスターは、この世界における、人を襲う、もしくは害を与える動植物の総称だ。中には肉食で人を食べる種族や、繁殖のための苗床にする種族もいる、非常に危険な存在なんだ」
「ふむ……」
「ステータスを見てると、シュラはそこらへんの魔物じゃ相手にならないほど強い。……が、おまえは戦い方を知らないうえに武器も持ってない。一人でいるには危険だ。だから、安全のために宿駅を利用したいんだ」
なるほど。と僕は納得した。
「カナエがそのほうがいいと思うなら、僕はなにも言うことが無いよ。だって、僕、生まれたばかりで右も左もわかんないんだ。だからカナエの方針に従うよ」
僕がそういうとカナエは「わかった」と頷く。
そうなると、宿駅ってどんなところか気になってきた。僕の好奇心が膨らんでいくのがわかる。
「ね」
「なんだ?」
「宿駅ってどんなところ?」
「そうだな……これから行くところはごく一般的な宿駅だ。別段変わっている所なんてないところだが、突然どうしたんだ?」
カナエは首をかしげて聞いてきた。
僕は素直に今の気持ちを伝える。
「ん? 楽しみだなって思って」
――そう、『いつだって』未知のものは楽しい。
僕はそう思い、へらりと笑ってそう言うと、カナエは無表情のまま、「……――変なヤツ」と答えた。
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