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水底のソフィア

オリジナルファンタジーBL小説を連載中です。主人公受けです。

ハッピーハロウィン!!

ハロー、ただいま病院の玄関休憩中のお暇なラズです。

双剣の英雄、第8話更新。これが、わたしなりのみなさんへのお菓子です(笑)
わたしも栄養源(萌え)になるお菓子がほしい……(遠い目)
とりっくおあとりーと!!!!!
だれかお菓子ください~~~~~!!!!

あ、それと補足ですが、母の手術成功しました。
今、母は痛みにのたうち回っています。ちょっと心配……。
では、またお会いしましょう!!しーゆーあげいん!!
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【BLファンタジー】双剣の英雄 第8話

第8話 はじめての宿駅

「わぁ……。ここが宿駅かぁ」
 僕は中規模の広場の真ん中で感心したように呟いた。
 目の前には僕の等身大ぐらいの透明な鉱石が美しくカットされ設置されている。そのクリスタルを中心にした広場の周囲には3軒の比較的大きいと思われる木造の建物が囲むように立ち並んでいた。靴底で踏みしめたのは、カラフルなモザイクのタイル。タイルは規則的な模様を作り、広場を埋め尽くしている。
 僕はドキドキしながら、周囲を見渡し。知的好奇心を満たす。
 なにしろ、なにもかもが物珍しく感じて仕方ないのだ。多少は気分が高揚してしまうのは仕方ないと思ってほしい。
 そして、僕が一番興味を持ったのは、やはり、まばらに行き交う人々。
 草原を裸にして土をならした街道に沿って、人がぽつりぽつりと歩いているのが見える。時折馬車の姿も見えたりして、僕は興味深いと視線を忙しなく動かしていた。
 実は、遠目でカナエ以外の人を初めて見た時に、僕は興奮気味にはやく街道に行こうとカナエを引っ張り、カナエに「落ち着け、目立たないようにするんだろう?」と注意された為、現在は視線を動かすだけにとどめているが、やはり、高揚する気分は隠せなかった。
「カナエ……! この綺麗な大きな鉱石って何?」
 先ほどから僕は食いつくように、カナエに質問しっぱなしだ。
 カナエも僕が興奮するのは仕方ないと思ったのか、最初は注意していたものの、今はもう何も言わず、隣で僕の質問に答えてくれる。今は広場の中央の目立つ鉱石を指さして、僕はカナエの服の袖口を引っ張っていた。
「……これは結界石だ。一定距離、――そうだな、この宿駅を覆うくらいの範囲を透明な壁のようなものを作り出して、人にとって無害なものしか通さないように出来ている。簡単に言うとモンスターを追い払う効果をもっていると言えばいいか」
「わあ、そんなすごいものなんだ」
「まあ、宿駅や町、村には必ず1つは設置されているものだな。珍しいものでは無いけれど拠点を作るには重要なものだ。だが、最近は結界石を生成出来る人材が減ってきているのが問題になってる」
「へ~、綺麗なだけじゃないんだ」
 じいっと鉱石を見つめ、観察していたが、途中でカナエに声をかけられる。
「そろそろ行くぞ。目立つ」
 と、素っ気なく言って、僕の手を握って3軒ある建物の1つに向かって僕を引っ張って歩いた。
 すこし強引な方法に僕は足をとられそうになりながらもついて行く。
「どこにいくの?」
「宿屋へいく」

 カナエに引きずられるように連れてこられたのは、木造の赤い塗料で塗られたレンガ屋根の建物だった。
 3軒ある建物の中で一番大きいんじゃ無いだろうか? なかなか大きな建物特有の重さのある趣の建物だと思う。
 看板には文字で夕暮れの草原亭と書かれている。
 あ、今気が付いたけど、僕、生まれたばかりなのに文字がわかるんだと目をすこし見開いた。
 どういう原理かわからないけれど、精霊にはある一定の知識がそなわるんだろうか?と疑問に思いつつ、カナエと連れだって宿屋の中に入った。
 中は質素だが落ち着いていて清潔、窓際には可憐な花が花びんに生けられている。
 正面にはすこし古ぼけたカウンターがあり、すこし小太りな40代くらいの女性が忙しそうにカウンターの傍を掃除をしていた。
 軽やかなドアベルが鳴り、扉が閉まると女性はカナエと僕に気が付いたのか、顔をこちらに向けた。
「あら、いらっしゃい、泊まりかい?」
 女性はそう言うといったん掃除道具を置いて、カウンターと歩み寄る。
「1泊……いや、2泊だな。2人、食事と湯を付けて宿泊したい」
 カナエは淡々と話を進めると、女性はカナエと僕に目を向けて好意的に微笑んだ。
 女性は頷くと黒板のような小さな板にチョークらしきもので何かを書き込んでいく。
「2人だね。……ベッドはシングル2つでいいかい?」
「かまわない」
 カナエと女性はどんどん話をすすめる。
 話によると、食事はカウンター右に食堂があり、朝と夕に食事を提供しているらしい。
 湯はそのままの意味で、たらいに一杯分の身を清めるためのお湯を1日1回部屋まで運んでくれるらしい。
「それにしても、ずいぶん立派な身なりだこと。商家の坊ちゃんかい? 護衛に月読会の騎士様なんて、豪勢だねぇ」
 ニコニコと快活に女性は笑う。
 ……月読会? またよくわからない単語だ。
 騎士はなんとなくわかる。――っていうか、カナエって騎士だったんだ。知らなかった。
 疑問を今すぐカナエにぶつけたい。が、僕は何も言わずに曖昧に微笑んだ。こういう時、喋るとなんだか墓穴を掘るような気がする。
 カナエは表情を変えず、こちらを見ていたが、なんだか「目立つな」と言われている気がした。……わかってるよ。
 何も言わずただ微笑むだけの僕に女性は、勝手に勘違いしたようだ。
「ああ!……なるほど、お忍びかい」と、言うと、流れるような慣れた手つきで鍵をカナエに差し出した。すると、女性はなにかに気づいたように微笑ましそうに笑った。
「あらあら、仲がいいねぇ」
 僕はなぜそんなことを言われたのかと目を瞬かせる。そして、女性の視線が僕とカナエの丁度間くらいにあるのに気が付いた。
 あ、カナエと手をつないだままだった……。
「それだけ仲がいいなら、いっそダブルにしたほうが安くつくよ。騎士様」
 僕はなんだかとても恥ずかしいことを指摘された気がして、赤面する。
 体温が上昇して顔が熱くなったことを自覚して、さらに恥ずかしくなった。
 カナエは相変わらず無表情で「俺はどちらでもいい」と、答え、こちらを見て「どうする?」と言った。
 知らないよ! 大体、ダブルってなんのことだよ!!?
 と内心叫びつつ、必死に何も言わずに口をつぐんだ。
 そして……。
 気が付いたら、広めなベッド1つが置いてある部屋にカナエにエスコート??されていた。
 僕は恥ずかしさのあまり、カナエと女性とのやりとりはそれ以降覚えてない。
 とりあえず、部屋に入ったとたんに僕の正気が戻ったことは確かだった。

WorldTypeを使ってみました。

ハロー、ただいま『双剣の英雄』の設定を軽く掘り返しているラズです。
WorldType
https://www.world-type.com/
というサイトを使って、ただいま設定を書いています。

なかなか細かく設定出来るおかげで、ストーリーの方向性が見えてきました。
が、着地点はまだ決めてなかったり。まあ、かなり長くなる長編小説にする予定なので着地点は今はまだ決めなくてもいいんですけど、一応伏線だけは書き出しておこうと必死に書いてます。

で、WorldTypeをつかった感想なんですが、なんかすごい詳しくキャラや組織が設定出来る!といった感じで、設定を作るのが好きな人にはたまらない感じです。
実際、私は使っていてすっごく楽しかったです。アイディアノートも付属していますし。チュートリアルもあり、なかなか面白い機能が盛りだくさんでした!!
――ですが、一方で客観的に見ると多少設定を作るのがしんどい人には辛いかも……。という印象を受けました。
なにせ、設定する項目が多いこと!!  これは設定作るのが好きじゃないと合わないだろうなぁと思いました。

まあ、一長一短ってヤツですね! わたしは使っていて楽しかったですが……。

あと、今日、母がお昼から手術する予定で、すこし気分的に落ち込み気味です。
お昼から付き添いで、長時間病院で待機するよていなので、今日8話を更新できるかと言われるとちょっと微妙だったり。
更新できたとしても深夜予定になると思いますので、みなさま、よろしくお願いします。
ではでは、アデューです~。

設定をもっと詳しく考えよう

ハロー、最近ちょっと焦っているラズです。
何を焦っているのかというと、双剣の英雄、軽い設定を書いたものの、詳しい設定はかいてなかったという無計画ぶりで書き始めたのですごく今焦ってます。
これはマズい。非常にマズい。伏線が回収できなくなるぞ~。ということで、今設定を一生懸命書いているところです。
それで、設定を書くにあたっていいソフトがないか探していたのですが、とあるサイトを見つけました。
『worldtype』
https://www.world-type.com/
これをみた私は感動しました。そうか、今ってこんなサイトもあるのねと感心しっぱなし。
有名なのかはわからないですが、このサイトを使ってみようと今から挑戦する予定です。
このサイトを使えばかなり設定を掘り下げられるんじゃないかとわくわくしております。
……まだ、使い心地はわかりませんが、がんばろ~。
それから、このサイトの使い心地もあとで報告しますね!!

【BLファンタジー】双剣の英雄 第7話

 第7話 これからのこと

「そういえば、この洞くつは森のどの辺にあることになるんだ? 町に行かないと話にならないんだが……」
「あ、たしか、僕はまっすぐ歩いて来たつもりだから、洞くつから見て正面に歩けば、森から出られると思う」
 カナエに問われて、そう言った僕は不意に、目覚めてしばらくしてから見た凄惨な光景を思い出した。
 何度も、執拗にまで倒れ伏した人を突き刺される凶器と、狂った感情がにじみ出していた顔をした男の顔を思い浮かべる。
「どうかしたのか?」
「あ、……うん」
 1日経っているけれど、もしかしたらあの男と遭遇するかも知れないと思うと不安だった。
 それに……森の中で倒れていたカナエは、あの惨劇と関係あるのだろうか?
 カナエは急に顔色が変わった僕を見つめていた。
 僕はすこし躊躇いがちに事情を話し始めた。
「カナエに会う少し前に草原の方で、誰かを襲っている男を数人見かけたんだ。その誰かはもう多分亡くなっていたと思う。でも、その男達はまるで……遊んでるかのように槍で何度も亡くなった人を突き刺していたんだ」
「……」
 カナエはしばらく無言で目を少し伏せた。
 そして小さな声で、「そうか」とだけ呟いた。
 カナエが何を考えているかわからないけど、なにかを思っていたのはわかった。
 僕はあの男達とカナエに何か関係があるのか気になったけれど、結局、カナエに問うことはできなかった。


 その後、僕とカナエは連れだって森の入り口に向かって歩き、途中目印をつけながら歩いて行った。
 そして太陽がほんの少しだけ傾くほど歩くと、森が開けてくるのがわかりそしてついに草原へとたどり着いた。
 心配した男達のことは、見る影もない。僕はこっそり安堵するようにため息を吐いた。
 周囲を見渡しカナエはぽつりと呟く。
「なるほど、このあたりか」
 カナエにはこのあたりの地域がどうなっているのかわかるらしい。検討がついたように呟いた。
「なら、ここから右の方角に行くと街道に出るな。宿駅も近くにある。町はデータクリスタルがなければ入れないが、宿駅なら……」
 カナエはしばらく考え込んでいるようだった。僕はカナエに質問する。
「カナエ、宿駅ってなに?」
「街道沿いにある、主に旅人が利用する、宿屋と酒場を兼ねた施設だ。貸し馬屋もある。この近くにある町は中規模だが、交通量は多いからな。この近くの街道には宿駅が比較的多く点在しているんだ」
 カナエはそう答えると、僕を見た。
「シュラ、ひとつ相談なんだが」
「なに?」
「一度宿駅を利用して町に行きたい。判断はおまえに任せる」
「どういうこと?」
「ようするに、俺が町に行っている間、シュラには宿駅で待機してもらいたい。この森は特殊でモンスターが少ないが、遭遇しないとは言い切れない。だからあの洞くつにお前一人を置いていくのは危険だとおれは思う。だから、安全な宿駅で待っていてもらいたいんだ」
「モンスター?」
「……そこからか」
 カナエは表情を変えなかったが、大いに呆れたようなため息をはいた。
 僕はその様子にムッとする。……仕方が無いじゃないか。生まれたばかりなんだから。
 カナエは僕を一瞥する森の方を見て、説明し始める。
「モンスターは、この世界における、人を襲う、もしくは害を与える動植物の総称だ。中には肉食で人を食べる種族や、繁殖のための苗床にする種族もいる、非常に危険な存在なんだ」
「ふむ……」
「ステータスを見てると、シュラはそこらへんの魔物じゃ相手にならないほど強い。……が、おまえは戦い方を知らないうえに武器も持ってない。一人でいるには危険だ。だから、安全のために宿駅を利用したいんだ」
 なるほど。と僕は納得した。
「カナエがそのほうがいいと思うなら、僕はなにも言うことが無いよ。だって、僕、生まれたばかりで右も左もわかんないんだ。だからカナエの方針に従うよ」
 僕がそういうとカナエは「わかった」と頷く。
 そうなると、宿駅ってどんなところか気になってきた。僕の好奇心が膨らんでいくのがわかる。
「ね」
「なんだ?」
「宿駅ってどんなところ?」
「そうだな……これから行くところはごく一般的な宿駅だ。別段変わっている所なんてないところだが、突然どうしたんだ?」
 カナエは首をかしげて聞いてきた。
 僕は素直に今の気持ちを伝える。
「ん? 楽しみだなって思って」
 ――そう、『いつだって』未知のものは楽しい。
 僕はそう思い、へらりと笑ってそう言うと、カナエは無表情のまま、「……――変なヤツ」と答えた。

ハロー、迷走中です

ハロー、ただいま迷子のような気分のラズです。

久方ぶりに連載小説を書き始めたのですが、久しぶりすぎて正直、自分の小説の書き方忘れていまして、混乱中です。
作風は多分変わってないはず……なんですが、自信が無いのとしばらく読み専していたせいか、なろう系?寄りで書いているなぁと、思います。
たぶん、今連載中の『双剣の英雄』は、なろう系、チート寄りのはなしになるかもしれないですね。そこにBLエッセンスを加え、闇鍋状態に……げふんげふん。
あと、18禁になりそうになったら、18禁のページだけ隔離して別サイト作ってリンクつくろうかな……。エロいのあんまし自信ないけど、書きたい気分はあります。ジブンノヨクボウニチュウジツ二。エロエロしたものが書きたい。……欲求不満?? ピュアさがほしいこの頃。

それと、この間から、久方ぶりにリア友に連絡取ろうと思いたったのですが、連絡がつかない……。
――なんというか、忘れられてるのかな。わたし。
しんどくて、連絡怠ったわたしの自業自得なんですがね! ハッ、自爆した!!
いやー、生来の出不精、連絡不精には、生存連絡するのでさえ難しくて、自分自身、非常に困った残念な子だなぁとおもいます。
はい。リア友にごめんなさいしなきゃいけないですね! 把握した!!(土下座)

とりま、そんなこんなで面白愉快な頭で日々を過ごして生活しています。
ではでは。また~。

【BLファンタジー】双剣の英雄 第6話

 第6話 朝のひととき

「ん……」
 瞼を開くと薄暗い洞くつの天井が見えた。奥にあるわき水の湧く音が覚醒を促していく。
 ああ、あの後、夜になったから、いったん眠ったんだっけ?
 ゴツゴツした岩の上に横になって眠っていたせいで動かすと非常に体が痛い。
 仰向けになっていた僕はとりあえずいまの体制を変えようと、ゆっくりと身を横に倒そうとしたところで驚く。
「っ!……なんだ、カナエかぁ」
 正面の至近距離にカナエの顔が見えて驚いたのだ。昨日カナエの隣で眠ったことを忘れてた。
 ……でも、こんなに近かったっけ? そんなことをおもいつつ、寝ぼけた頭でカナエの顔を観察する。
 うわ~まつげ長いなぁ。ほんと端正な顔してるし、同性ながら、感心するなぁ。
 色々考えつつカナエの顔をぼんやりと見つめていると、カナエの瞼が震えた。
 ゆっくりと瞼が開いていく。エメラルドグリーンの瞳が洞くつの暗がりの中輝いていた。
 どうやらカナエも目を覚ましたらしい。
「……」
 無言で僕たちは見つめ合う。
 そしてたっぷり10秒たったころ。カナエが口を開いた。
「寒い」
 そういうと、突然カナエが動き出し、僕の身を自分の方へ寄せて、抱え込むように抱きしめた。
 そうなると僕の顔は自然とカナエの胸元へ移動する。
 カナエは寝る前に鎧を脱いでいたので、いまはごつごつとした感触は無く、あるのは鎧の下に着ていた黒い衣服の柔らかさと、暖かな人肌の温度と、微かにかおる昨日の血の残り香、そして、命を刻む心臓の音だ。
 あったかい……。
 血の流れる音と心臓の独特のリズムに安心すると共に、僕の意識は急速に覚醒する。
 ……あれ? これってなんだかすこしおかしくない? いくら寒いって言っても、なんだか近すぎない?
 ――いや、僕はいろんな意味でこの世界に無知だから、よくわかんないけど。
 これって、そもそもカナエ寝ぼけてる?
 あ、でも、そんなことより、光が入ってきてるって事は、もう朝だから、カナエ起こさなきゃ。
 僕はカナエの腕の中でそんなことを考えると、カナエに声をかけた。
「カナエ~。起きて。朝だよ~」
 声をかけたタイミングからすこし遅れて、カナエは反応を示した。
 ゆっくりとした動作で、かわらず無表情のカナエが腕の中の僕を確認する。
「あ、おはよ」
 僕が朝の挨拶をカナエにすると、カナエは少し考えるような様子を見せて、「……おはよう」と、返事を返した。
 そして、僕をゆっくりと腕の中から解放して、カナエは起き上がる。
 僕もカナエに習って起き上がる。すると、カナエはなぜか自分の腕を確認しはじめて、首をかしげていた。
「なにをしてるの?」
 僕が問いかけるとカナエは首をかしげたまま答えた。
「ああ……、なんでシュラを抱きしめてたんだろうと思って」
「なんでって、『寒い』って言ってたから、寒かったからじゃないの?」
「……」
 しばらく無言でカナエは考え込んだようだった。
「???」
 僕がよくわからず首をかしげると、カナエは1つ頷いた。
「そうか。寒かったからか」
 と1人で納得して奥のわき水の方へと立ち上がって移動していく。
 意味がわからない……。
 ……もしかして、カナエって朝が弱いんだろうか? と僕は思った。
 そして、その後、朝になったらカナエに抱きしめられている事が常習化することを今の僕は知らなかった。



 朝の身支度が終わった後、僕たちは洞くつの入り口で向かい合って話していた。
「とりあえず、これからどうしようか、先生?」
 僕が冗談めかしてカナエを先生と呼ぶと、カナエは先生と呼ばれたことをスルーして話をすすめた。
「まあ、これから用意しなきゃいけないのは、衣食住だろうな。これから、ここでひっそりと隠れ住むんだ。このままじゃ駄目だろう」
「スルーされた……」
「まあ、衣食に関しては、俺が近くの町から持っている金で調達してしばらくはどうにかできるだろう。問題は今、中途半端な住だな」
「うぅ……」
「この洞くつは、飲み水は確保出来ているが、けっして住みやすいわけじゃあない」
「――カナエが冷たい」
「真面目に聞け」
 頭を軽くはたかれる。僕は渋々「はい」と、頷いた。
「でも、カナエ。お金っていいのか? カナエのお金なんだろ?」
 僕が反論するようにそう言うと、カナエはため息を吐いて。
「お前、金持っているのか?」
「ううん、一銭も持ってない」
 僕は首を振る。
「でも、これをお金に換えることは出来るんじゃ無いかなぁ?」と、僕の首にぶら下がっていたネックレスをカナエに渡す。
 カナエは渡されたネックレスを一瞥すると僕に手渡しで返した。
「あのな。俺たちは目立つ行動は今できないんだ。そんなときにこんな上物のペンダントなんか換金した日には、目も当てられない」
 僕は驚いて手の中にあるペンダントを見た。
「え、これ、そんなに高価なんだ……」
 僕はしげしげとペンダントを見つめる。
「それもあるが、精霊のお前がもっているんだ。なにか大きな付加価値があってもおかしくない」
「あ……」
 なるほど、そっか。これ、目が覚めてからずっと身につけてるものだから、変な効果とかあるかもしれないんだ。
 僕は納得した。
「だから、しばらくは俺のもっている金を使う」
 なんだか、カナエに頼りっぱなしで申し訳ない。
「――ごめん。カナエ、ありがとう」
 僕はカナエにお礼を言った。
「きにするな。シュラが稼げるようになったら請求する」
「うん! その時はきっと倍にして返す!」
 僕がそうカナエに宣言すると、カナエは無表情ながらすこし頬を緩ませたようだった。
 ……今、笑った? カナエ、笑った?
 きっと、今、カナエは笑ったんだ。そう思うと僕は嬉しくなって、カナエに笑い返したのだった。

【BLファンタジー】双剣の英雄 幕間1

 幕間1 夢

 それは遠い昔。
 高慢な一部の人間が、神をも恐れぬ禁忌を犯し、世界を病に冒しました。
 世界は闇に飲み込まれ、最果ての地から少しずつ削られていくように、壊れていきました。
 だれもが、諦め、絶望に陥った時、一部の心に希望を持ち続けた人々が、立ち上がりました。
 世の人は希望持つ人を英雄と称え、世界を危機に立ち上がった英雄たちは、世界を救い、世に光を取り戻しました。
 英雄たちはその後、幸せな一生をおくりました。
 それこそ絵に描いたハッピーエンドのように。


 絵に描いたハッピーエンド。 
 それは――ほんとうに??


 だれかが泣いている声がする。
 体が重たい。体が冷えていく。
 痛い。痛い。痛い。
 呻くような悲鳴を上げる。けれども次第に、痛みも遠ざかっていく。
 泣かないで。と、誰かに告げたかった。
 けれども、血の味に溺れて、声にならなかった。

【BLファンタジー】双剣の英雄 第5話

 第5話 こうしてはじまる物語

「とりあえず、名前はわかったな。シュライク」
「……そうだね」
 騒ぎすぎてぐったりした僕は、カナエの言葉にため息を吐く。
「長い名前だからシュラでいいよ。カナエ」
「わかった」
 疲れ切った僕の言葉にカナエは頷いた。
「しかし、まさか人間じゃ無かったなんて、ほんとうに予想外だよ……」
「俺には精霊が自分を人間と思い込んでいたところが予想外だったがな」
 カナエは呆れたように僕を見た。
「そういわれても……僕は精霊というものがどんな物なのか知らないし」
「自分のことなのにか?」
「うん」
 自分の事なのに何もわからないというのは、結構辛い物なのだなと大きく息を吐き出す。
「ねえ、カナエ」
「なんだ」
「精霊のこと、教えてくれない?」
「……たいしたことは教えられないぞ」
「いいよ。なにもわからないよりはマシだから」
「……」
カナエは静かに僕を見つめる。そして、少し躊躇うように話し始めた。
「人間にとっての精霊は、言わば世界の意思の欠片だと言われている。精霊には、善も無く、悪も無く、個さえ曖昧で、ただひたすらに世の観測者でありつづけ、そして求める者の呼び声に答えるモノだと。」
「求める者の声?」
「この世界における魔法のほとんどは全て精霊によって引き起こされているとされている。契約と詠唱によって、精霊の力を現出させているのだと。契約と詠唱こそ、精霊に唯一呼びかけることができる手段だ。この手段が求める者の声だと言われているな。」
「……」
「だけど、シュラ。お前は違う。お前は人という種族に似過ぎている。通常、個が希薄な精霊に、喜怒哀楽があるというのは……」
「……おかしい?」
 僕がカナエに尋ねると、カナエは肯定するかのように目を伏せた。
「そっか」
「あと、触れられる肉体を持っているというのも、おかしな話なんだ。精霊は普通は目に見えず触れることもできないものだから」
「うん」
 そうか。僕は異質なのか。そう思うと心が沈んだ。
 このなんとも言えない気持ちも、きっと精霊としてはおかしいのだろう。
 では、この僕という個は一体なんなのだろう? がらんどうの記憶が胸をしめつける。世界でひとりぼっちになったかのような気分だ。
 僕はうつむき唇を噛みしめた。しばらくすると、カナエが僕を呼んだ。
「シュラ」
 カナエの声がする。
「シュラ、勘違いするな。これは一般論なだけだ。世界中を探せば、お前のような精霊も存在するのかも知れない。一時の感情に左右されるな。」
 僕は俯いていた顔をあげるとカナエがこちらを真摯に見つめていた。
「――おまえは、おまえだ」
「……うん」
 カナエは言葉を選ぶように僕を励ます。だから、僕は笑うことにした。平気だよ。大丈夫って気持ちを込めて。
 だって、カナエは無表情だったけれど、僕よりももっと痛そうな顔をしていたから。
 僕にはカナエの考えていることはわからない。けれど、僕を真剣に心配してくれていると僕は感じた。
 なら、それだけでいい。たとえ僕が異端だったとしても。
「わかった」
 僕がそういうと、カナエは安心したように息をついた。
「だけど、どうしようか? 僕がそんなに『珍しい精霊』なら、他の人に珍獣として扱われそう……」
 気を取り直して、すこし冗談めかすように僕はカナエにそう言った。
 するとカナエは考え込んだ様子でしばらく黙る。
「珍獣扱い……で済めばいいが。正直、他の人間にシュラの事を知られるとやっかいなことになるかも知れない」
「具体的には」
「良くて軟禁。悪くて――」
「あ、いいです。言わなくて。想像するのが怖い」
「賢明だな」
 僕は他の人に捕まった未来を思い描くと身震いした。実験動物扱いとかされたらどうしよう。ほんとに。
「じゃあ、僕はあまり人に会わないほうがいいんだね?」
「まあ、極端に言えばそうかもしれないが、多少は会ってもかまわないと思う。要は精霊と気づかれなければいいんだ」
「でも、万が一ばれたらどうしよう」
「そうだな……」
 カナエはすこし考えるそぶりを見せる。そして、
「怪しまれないぐらいに、この世の中の常識を勉強して。もしも捕まっても、逃げられるよう鍛えればいいんじゃないか?」
 と、結論を出した。
「幸い、この近くには中規模の町がある。普段は拠点としてここで常識を学んだり、鍛えたり、生活をして、必要になれば町に移動したり、旅に出ればいい。この森はすこし特殊だからな。人も滅多に近づかないだろう……」
「僕はなにがなんだかさっぱりだから、カナエに任せるよ」
 そして、僕らのある意味単調で、おかしな生活は幕をあけることになるのだ。

【BLファンタジー】双剣の英雄 第4話

 第4話 困惑

「そういえば。さっきのお前の名前がわからない件だが……。わかるかもしれない」
 カナエがそんなことを言い出したのは、僕が気恥ずかしさから回復してからだった。
「え?」
「さっき身を清めていた時に気が付いた。ステータスを見れば、わかるんじゃないかと思う」
「ステータス?」
 僕は聞き覚えのない言葉に首をかしげる。
「……そこもおぼえていないんだな」
「――ごめん」
 どうやら、僕は一般知識でさえ抜けているらしい。カナエの口調からして、ステータスは一般常識の範囲にある知識みたいだ。
「いや、お前が悪いわけじゃない」
 カナエが首を振ると、僕の方を見た。
「お前には命を助けてもらった恩がある。ずっととは言えないかも知れないが、俺のできうる限りは側に居て、お前を守ろう。足りない知識も俺が教える」
「へ? え? ち、ちょっとまって! そこまでしてもらうなんて……」
「じゃあ、お前はこの状況下、放り出されて生きていける自信はあるか?」
 僕は言葉に詰まった。自信がなかったからだ。
「俺もみすみす、恩人を死なせたくはない。俺はお前に会う前、死にかけたあの時、命を諦めていた。それに……俺に戻るところはもうない。諦めていたところをお前に拾われた。――だから、お前の傍にいようと思う。だめか?」
「……いや、だめじゃないけど……。」
「なら、決まりだ」
 かなり強引に話がまとまったような気がする。けど、カナエが行くところが無いっていうなら、側に居ても……いいのか?
 僕はすこし、途惑いつつカナエを見るが、カナエの表情は無表情のままだ。
 なんというか、喜怒哀楽が乏しいのかな? カナエって。
 そう思いつつ、一般常識ですらあやしい僕にとっては願ったり叶ったりの申し出だったので、こくりと頷いた。


「じゃあステータスの話からだ」
 気を取り直して、カナエは僕に説明を始めた。
「ステータスとは、簡単に説明すると、個人に刻まれた、その個人の詳細な情報の塊のことだ。これは個人個人でそれぞれ能力値や種族、職業の違いがあり、これによってこの世界では身分が証明されるように出来ている。尚、『ステータスオープン』と心の中か声に出して唱えることで、自分の情報が自分にのみ開示される。ちなみにこの情報を他人にみせようとするならば、『ステータスフルオープン』と開示するという意識をのせつつ、声に出して唱えなければならない。……ここまではいいか?」
「うん」
「だが、これらの呪文による情報開示は非常に危険な側面を持っているんだ。だから、通常は……そうだな実際に見た方が早いな」
 カナエはそういうと、懐から、薄い手のひらサイズの透明な板を取り出した。
「これは、データクリスタルというものだ。このデータクリスタルに、然るべきところで、開示しても問題にならないステータスの写しを登録することができる。だから、通常は、このデータクリスタルで身分や能力、種族を証明することができるようになっている」
 そう言うと、カナエは僕を見た。
「それで、お前はこのデータクリスタルに見覚えはあるか?」
「ない」
「そうか。なら仕方が無いな。データクリスタルをもっていないなら。『ステータスオープン』しか方法が無いだろう。本当は、あまり使わない方がいいんだが……」
「どうして?」
「『ステータスオープン』は、通常は自分にしか見えないものなんだが、特定のスキルを持っているものには丸見えになる。もし、悪人に見られでもしたら目も当てられない状況になるんだ」
 そこまで、一気にカナエは話すと、ため息を吐いた。どうやら、カナエは僕が『ステータスオープン』を唱えるのを躊躇っているようだ。僕は首をかしげる。
「で、どうして、今、あまり使わない方が良いの? カナエしかいないのに」
「――正直に話そう。俺はその特定のスキルを持っている。……だから――」
 僕はもう一度首をかしげて、カナエを見て言った。
「カナエは僕のステータスを悪用するの?」
「するわけがない」
 即答だ。
「なら、いいじゃないか。心配することはないよ」
「……だが。――すこしは警戒しろ」
「したって意味がない。大体、個人の情報と言われても、僕は覚えていないから、もしかしたら開示された情報も理解出来ないかも知れない。だったら、僕はカナエがいてラッキーだったね。その上、スキル?で同じものが見られるんだから、説明してもらえるだろうし」
「――」
「ま。もし、カナエが僕の情報を悪用するなら、それは僕のカナエをみる目がなかったってことで自業自得ってことだよ。カナエが気にすることは無い」
「……お前」
 カナエの変わらなかった表情がすこし驚いているように見えた。だから、
「僕はカナエを信じるよ」
 僕はそう言って笑った。


「精神を集中して、唱えるだけだ。雑念は捨てろよ。情報がよくわからなくなる」
僕は今、初の『ステータスオープン』の挑戦に緊張していた。
カナエのアドバイスをしっかり聞いて、精神を集中させていく。
「わかった。じゃあいくよ」
『ステータスオープン』
呪文を唱えた瞬間、浮遊感に襲われる。
すると、眼前にブルーの透明な背景が現れ、その上に金色の文字が書き込まれていく。
そうして、浮遊感がおさまると、文字が書き込まれるのも止まった。

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名:シュライク 性別:男性
種族:精霊 年齢:0歳(0ヶ月)
傾向:混沌/善
属性:無属性
職業:―――
状態:封印 現出

体力:C
魔力:S
筋力:S
守備:C
精神:A
俊敏:A
幸運:D

職業スキル
~封印~

身体スキル
~封印~

個人スキル
~封印~
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「「……」」
 僕たち2人はあまりの予想外の結果に呆然としてしまった。
「――え? え!? ……僕ってもしかして記憶が無いわけじゃなくて生まれたてだったってこと? ていうか、精霊? 人じゃ無くて、精霊!?」
「ま、まて。落ち着け……」
「カナエ! 僕、人じゃ無かったの!? ていうか、封印って何!? 現出って??」
「落ち着け!」
「無理! 落ち着いてられるかぁ!!!」
 パニックに陥った僕が洞くつのなかで叫んだのも、仕方の無いことだと思いたい。